丸岡内科小児科クリニック 院長 丸岡 文雄

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食後の高血糖と心筋梗塞、脳梗塞との関連

 今日は食後の高血糖と心筋梗塞や脳梗塞との関連について、お話ししてみたいと思います。生活習慣病を治療するようにと周囲から言われても、通常は自分はこんなに元気なのになぜ病院にいかないといけないのかと思う日々の方が多いと思います。虫歯に例えると毎日歯磨きの手入れをせずに放置していると、少しずつ蝕まれて、大きな虫歯になり、果ては歯槽膿漏で歯が抜けてしまうのと似ています。血管も状況はそっくりで、生活習慣病も放置していると、毎日少しずつ血管の内側が傷んで動脈硬化が進行し、プラークと呼ばれる一種の瘤(こぶ)が血管の内側にできプラークが破裂され中のコレステロールを主とする物質が血液中に晒され、血の塊(血栓)が形成され、血管を詰まらせたり(心筋梗塞、脳梗塞など)と、血の塊(血栓)が遠くの血管まで飛んで詰まらせたり(脳塞栓など)、いろいろな病気の引き金になります。

 生活習慣病の怖さは昨日まで元気で普通に働いていた人が、ある日突然倒れて、そのまま急死したり、半身マヒや寝たきりになり、患者様ご自身や家族の方、周囲の方までが不幸になることです。生活習慣病が「メタボリックシンドローム」と呼ばれる病態を引き起こし、その状態が長く続くことによって、全身の血管が蝕まれ、やがては脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすという結果につながるからです。メタボリックシンドロームは2005年4月に日本においても診断基準が発表されました。「2型糖尿病」、「高脂血症」(高コレステロール血症、高トリグリセリド【中性脂肪】血症)、「肥満症」などの病態が合併している場合に動脈硬化が進展しやすく、この病態をメタボリックシンドロームと定義しています。糖尿病や高血圧を発症している場合、それらの治療は当然なされます。メタボリックシンドロームを構成する病気はいずれも単独で動脈硬化症の発症、進展を促進します。重要なのは、一つ一つの病気は「病気と診断するほどではない、未病の段階、発症寸前の状況(いわゆる予備軍)、あるいは軽症の段階」といった異常が数種類重なった場合に動脈硬化症が大きく進行してしまうことです。すなわち、ある患者様が糖尿病予備軍(境界型糖尿病)、軽症の高血圧、総コレステロールや悪玉コレステロール(LDLコレステロール)、中性脂肪(トリグリセリド)などの軽度の上昇、いわゆる小太りの中年太り(軽度の内臓肥満)を合併しているとき、一つ一つは軽症でも、4つ要因が重なると動脈硬化が大きく進行し(健常人よりも10年〜30年動脈硬化が早く進展します)、全身の血管が症状もなく蝕まれてしまい、働き盛りのときに心筋梗塞や脳梗塞で倒れる悲劇へとつながっていきます。そうならないための日頃からの心がけが必要です。生活習慣病、メタボリック症候群(シンドローム)に対処するにはまず自分自身の健康状態を正確に把握することが重要です。血圧、コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)、血糖の異常値を健康診断や人間ドックで指摘されたときは早めに病院を受診し、コントロールを図ってください。また肥満、特に腹部肥満が判明したときも、ダイエットや運動を心がけてください。

 最も発見が難しいのは隠れた糖尿病(糖尿病予備軍)です。これは食後高血糖のみの異常の方で、通常の健康診断や人間ドック、あるいは普段病院で行う絶食での血液検査では発見できません。「75グラムブドウ糖負荷試験」という特殊な検査、あるいは食後2時間での血液検査で診断できます。隠れた糖尿病(糖尿病予備軍、食後高血糖)の方は厚生労働省の統計でも年々増加し、高血圧と同様身近な病気になっています。糖尿病の予備軍(食後高血糖)は潜在的に親から受け継いだ糖尿病の遺伝子(日本人の3人に1人が持っていると推定されています)を持つ場合と、高度の過食、運動不足が持続して、腹部肥満(内臓脂肪蓄積型肥満)となり、肝臓や全身の筋肉に脂肪が蓄積して、肝臓や筋肉のブドウ糖の取り込みが低下し、インスリンの働きが悪くなることが原因の場合とがあります。腹部肥満があると、脂肪を貯蔵する脂肪細胞から分泌されるホルモン(アディポサイトカイン)のバランスが崩れて、インスリンの働きが悪くなります。「インスリン抵抗性」という状況です。

 それでは食後高血糖(糖尿病予備軍)の患者様はどのようなことに気を付けると良いのでしょうか。まず第1に運動です。それも30分以上続けられる運動(散歩やジョギング、水中ウォークなど)、すなわち有酸素運動が良く、きつくなく無理なくできる強さの運動「ニコニコ運動」が適しています。第2に気を付けるべきことは食事です。急激に血糖が上昇する食物(清涼飲料水、干し柿、砂糖菓子など)は極力控えましょう。そして、腸での糖分の吸収がゆっくりなるように食物繊維を多く含んだ野菜やコンニャク、海草などをたくさん摂取するよう心がけ、主食はお米(特に玄米)が西欧型の食事よりも望ましいです。一口10回以上かむことや、一度の食事を20分以上時間をかけてゆっくり食べる習慣を持つことも大変重要です。

 食後高血糖(糖尿病予備軍)に対して、まだ正式な保険認可の薬剤はありませんが、海外での臨床試験では、αグリコシダーゼという腸での糖分の吸収をゆっくりにする薬剤が大変有効であるとの証明がなされています。αグルコシダーゼは食後高血糖を改善して、肥満や本格的な糖尿病への移行を予防してくれますし、動脈硬化の進行を遅らせて、心筋梗塞や脳梗塞の発生を激減させてくれます。また、短時間作用型血糖降下剤(グリニド系の薬剤)も食後高血糖を強力に改善しますので、近い将来、多数使用されていくと思われます。

 以上食後高血糖と心筋梗塞や脳梗塞との関連についてお話ししました。生活習慣病は正しく対処すれば重大な病気を早い段階で予防でき、豊かで健康な人生を送ることがわかっていただけたらうれしいです。

 当クリニックの2つのロゴマークは緒方雅一くんという10歳の男の子の「宇宙へ(そらへ)」という絵を元にしています。緒方くんは小児がんの療養を続け、入院前に絵を描きました。早退や欠席を繰り返し、絵の完成が遅れていたので、「ぜひ仕上げたい」と休み時間や放課後も一人教室に残り、黙々と絵を描いていたそうです。明るく友達が多かった緒方くんは、たくさん苦しみながらも闘病中も友達を励まし、そして励まされながら最期まで病気と闘っておりましたそうです。(緒方くんには頭が下がります。)緒方雅一くんや共にがんと闘った彼の友人達の周囲に対する優しい気持ちを多くの方たちに伝えたいと思い、二人のイラストレーターの方に依頼しました。
※(緒方くんの絵は5年前、がんの子供の絵画展で知りました。夕刊の新聞で平田舞さんの青い鳥の絵や鈴木景子さんのお嫁さんの絵など心に残る絵が多数ありました。)
本村イラストレーター作 渡利イラストレーター作

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